Kバレエ・オプト 『踊る。遠野物語』取材ノート❹

2026年1月9日 Kバレエ・オプト 『踊る。遠野物語』取材ノート

Kバレエ・オプト 『踊る。遠野物語』取材ノート❹

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踊る。遠野物語 | K-BALLET

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〈取材ノート第4弾〉

■森山さん囲み取材@Kバレエトウキョウスタジオ(2025年8月28日)

Kバレエ・オプト『踊る。遠野物語』の演出・振付を手掛ける森山開次さんは、都内で行われた公開稽古終了後メディア各社の取材に応じました。インタビューの内容を紹介します。

森山さん

今作には壮大なテーマがたくさん込められているので、キャスト一同と体を使って励んでいるところです。東京公演は12月ですが、少しイレギュラーな日程で夏に先行して稽古をして形を作り、明日(8月29日)で一旦納めます。その後12月に稽古を再開してまた作りあげていきます。主にKバレエ トウキョウの稽古場を使わせてもらい、Bunkamuraのサポートも受けながら良い環境でやらせていただいています。

―稽古は理想通りに進んでいるか、進捗を教えてください。

結構なシーン数があるので、フル回転でずっとしゃべりながら稽古をしています。本当はもっとダンサーのみんなと話していろいろな意見を戦わせながらやりたいんですが、日本の創作現場は時間との戦い。「こう動いて」「こんなイメージで」という感じで、とにかく僕が何をやりたいかをみんなに提示して創作しています。その中でダンサー一人一人の個性を出したいという思いもあります。特に、バレエの動きについてはKバレエのダンサーから意見を出してもらったらうれしいし、みんなの個性を出していきたいとこれからも思っています。出演するみんなが、どんどんその場で自分のものにしようという姿勢で稽古に臨んでいます。だから、まずは僕がたくさんしゃべって、こういうふうにしたいと伝えてやっていった方がいいのだなと稽古場に入ってから分かりました。2年くらいずっと『遠野物語』のことを考えてきた僕の頭の中のイメージを、とにかくみんなにはき出してやっています。まだ稽古途中で、全然完成していないので、12月の本番まで時間をかけてブラッシュアップしていきます。

―バレエダンサーと舞踏家の身体性に違いがある中で、一つの作品をまとめる難しさと面白さをどのように感じていますか。

面白さが勝っていて、難しいと思うことは何もありません。せっかくだからバレエと舞踏を融合させていきたいので、違いを楽しみたいし、お客さんにも違いを見ていただきたいと思っています。僕自身、自分のいろいろな創作の身体表現を模索する中で、時には舞踏に近い表現もしたい、またある時にはバレエダンサーのように飛びたい、そういう思いでソロダンスをやってきました。こうして舞踏とバレエの両方のダンサーが一緒になるのが僕にとってはとてもうれしいことです。楽しんでやっています。

―ダンスに合わせる音楽はどのようなイメージをしていますか。

今回は音源と生演奏の組み合わせになるので、そのバランスをどうするか。音楽とダンスの作り方はとても難しいですよね。音楽を作ってから振付をつくる方法も当然ありますが、そうすると全部が音楽に沿って作られてしまうので、今回のような新作のプロジェクトの場合はなかなか難しくなります。和楽器の演奏者と音楽制作チームには7割くらい形を作ってもらい、稽古場で僕が手を加えさせてもらっています。足りない部分や新しく生まれたシーンの音は、とりあえず僕が声を出しながらイメージを作っています。まだ音楽を練り込む時間があるので、生の音と音源の両方の強みを出していきたいと思っています。舞踏家は大きな音を立ててエネルギーと間合いをはかることがあるので、僕もみんなをガイドする時は「ワン、エン、ツー」とカウントをとるだけじゃなく、「はい、どーん」と大声で鼓舞するなどして一緒に踊っているつもりでやっています。舞踊家としては、稽古場で生まれる「生の音」を大事にしたいという思いがあります。音が「怖さ」をはじめとしたいろいろな要素につながると思っています。

―Kバレエダンサーの印象は

とても素晴らしい若者たちで、可能性に満ちていると感じます。誠実で真面目で、ひたむきですね。毎日稽古場に来ると、ダンサーたちはすでにバーレッスンをやっていて、そこから稽古を積み上げていく形。若く新しい才能の芽を見ているような感覚です。

―深いテーマを込めた作品になる。作品を通じてお客さまに伝えたいメッセージは。

今作のキャッチコピーは「会いたい、話したい、無性に。」生と死の狭間というテーマが一つあります。日本独自の死生観、死との向き合い方というのが『遠野物語』には内在しています。誰しも亡くなった人とは距離が離れてしまいます。でも、どうしてもその人と会いたい、話したい、一緒に踊りたいと願う気持ち。それが今作の最大のテーマになったらいいなと思っています。その気持ちが唯一、僕たちが分かるリアルな感覚。生きている人間が向こう側の世界とどう接していくか、どうこれからを生きていくかということにつながるはずです。ただ怖い妖怪がでてくる物語でなく、祈りの中の『遠野物語』を届けていきたいなと思っています。

■菊池マセさん取材

―出演のオファーを受けた時の気持ちはいかがでしたか。

私じゃなくて若い人の方がいいのではないかと思い、最初は断りました。作品の詳細を聞いたら、若い人だと役柄上なじまないようだったので、オファーを受けることにしました。

―稽古をしてみた感想を教えてください。

本当に普段やったことのない現場なので、役割をこなせるかすごく心配ですが、楽しさも感じています。演出の森山開次さんが言葉のニュアンスなどについて指摘をくれたり、実際に歌って教えたりしてくれました。なんとか森山さんの描くイメージに近づけるように頑張りたいです。

―舞台で歌う歌について教えてください。

遠野地方の子守歌をいくつか歌います。遠野生まれの私でも全く聞いたことのない歌でした。昔遠野は飢饉で食糧難になって、子どもが売られるということも起きました。そういう歴史がやがて童歌や子守歌の歌詞にも反映されていったようです。今回歌う歌は、あまりメロディーがなく一本調子で、どれも同じような感じに聞こえてしまうので、私なりに工夫を入れて歌います。

―地元岩手での公演もある。お客さまにメッセージをお願いします。

ダンス作品の中で歌う、こんな経験は最初で最後だろうと思っています。ダンサーの皆さんもこうしたコラボレーションは初めてのようですから、期待が大きいのではないでしょうか。たくさんの人に見に来てもらえたらうれしいです。

聞き手:千葉園子

2026年1月9日 Kバレエ・オプト 『踊る。遠野物語』取材ノート